山梨中央銀行吉田支店
支店長 小嶋俊学さん/ 上席副支店長 内田伸一さん
山梨中央銀行吉田支店がドットワークPlusに出張相談会を設けた理由
- どのようなきっかけで出張相談会をドットワークPlusでされていますか?
- 私たち山梨中央銀行では、月に2回、『Q-STA相談会』をドットワークPlusで開催しています。この相談会では起業相談、融資相談のほか、ビジネスマッチングなども行っており、当行の中でもこれまでになかった新しい取り組みです。そのきっかけは、ドットワークPlusの運営元”キャップクラウド株式会社”様が進める『富士吉田市まるごとサテライトオフィス(以下まるサテ)』が、移住定住の促進、関係人口の創出、地域活性化といった地域に資する社会性の高い取り組みであり、そこに賛同したためです。また、ドットワークPlusは、まるサテの一大拠点として「この地域で新たに事業を始めよう」「頑張っていこう」という気概に満ちた方々が集いやすく、地域内外の新規事業者の方々も多く交流されている場所であるということも、出張相談会を行う理由です。
一般に新規事業は多くの場合、キャッシュフローが安定しにくく、資金繰りが大きな課題である場合も少なくありません。特に、投資が遅れることで商機を逃すことを考えると、すぐにでも融資が必要だという方も多いのではないでしょうか。そこですぐに手を差し伸べられれば良いのですが、スタートアップ企業さんに対する与信判断は、立ち上げの段階では実績が少なく、私たち金融機関にとって一番難しい案件です。その事情は事業者の方も察しているようで、融資等を銀行に相談することは敷居が高いと思われがちでした。そのため、この取り組みでは、融資相談だけに的を絞らず、事業の立ち上げ、運営、ビジネスマッチングなど、多角的な相談ができるようにして、より多くの新規事業者の方の力になりたいと考えています。事業者の方にとって、最初にお付き合いする銀行というのは心に残りやすいので、そこを掴みたいという狙いもあります。考えているビジネスモデルで本当に安定した利益が出せるのか、事業計画に無理はないか、その他事業にまつわるさまざまなことの相談に乗りながら、お客様のビジネスの悩みを一緒に解決して行こうというのが相談会の主旨になります。
またドットワークPlusを訪れたことがある方ならご存知だと思いますが、同所は明るく開放感がある場所なのでカジュアルに訪れることができると思います。肩に力をいれず、作業のついでに相談するということもできるので、敷居も下がるのではないでしょうか。さらに、相談会には当行の若手も参加しています。新規事業の中には、これまでに私たちが思いもつかなかった新しいビジネスがあり、一緒に学び、悩み、考えることで人材の成長と達成感に繋がっていくものと考えています。新規事業者と若手の行員が成長し、ゆくゆくは地域全体が盛り上がっていくことに繋げていけたらというのがこの取り組みの大きな目標になります。 - いつもどのようなお仕事をするときに使用していますか
- 相談のお客さんがいるときには出張相談窓口になっていますが、それ以外の時間は書類作成などの業務を行っています。私たち行員は、一般的に利用されるWi-Fi等とは別の専用ネットワーク回線を持っているので、セキュリティの面でも問題なく、快適に施設を利用させてもらっています。PCのディスプレイも斜めからは画面が見えないようになっているなど物理的なガードも万全です。このような仕組みが整っているので、若手から中堅まで、さまざまなクラスの行員が窓口に立って経験を積んでいます。もちろん、作業だけではなく、ドットワークPlusを訪れたお客さんとのコミュニケーションも欠かしません。他企業の相談会などがあったりすると、そこに参加した方達とも名刺交換ができるといった出会いの報告も受けており、地道に、継続的に活動していけたらと思っています。
この出張相談会は、すぐに収益に結びつけようといったことではなく、ここで事業者さんとの関係性を育てて、地域全体が盛り上がればという想いでやっています。現在は当行が月に2日の相談窓口を開いていますが、それが例えば当行以外の金融機関などが出張窓口を設けてくれて、毎週いずれかで相談できるような体制が整えば、事業者の方にも選択肢が生まれ、より多くの事業者を応援できると思います。しかし、連携するにも、まずはやってみてどのような結果が出るかという今の段階です。これがうまくいって、多くの事業者が窓口の利便性を理解してくれ、新しい事業が生まれていく中で、ゆくゆくは金融団として活動ができたら、この富士吉田市が他の地域に負けない強い地域になるのではないでしょうか。
この流れは理想的ではありますが、すでに他金融機関との協力体制というのはでき始めています。この夏には、子供たちに向けた金融リテラシー教育を他金融機関と連携した金融団として、富士急ハイランドで実施しました。この取り組みは日本金融通信社のニッキンでも取り上げられ、企業の垣根を超えた連携として注目されています。せまい地域で銀行同士で戦っても、疲弊するだけなので、もっと広い視点で地域発展のために共存共栄の精神でみんなで協力していく。その中で「先週は他金融機関さんが契約をとったから、今週はうちも頑張るぞ!」という前向きな競争が生まれたら最高ですね。 - ドットワークPlusに出張相談会を設けることができてよかった点は?
- 実際に起業の相談もいただき、それに関わった行員には、大きな成長を感じました。当然ですが融資の決定には、決裁者の決裁をもらわなくてはなりません。担当する行員は、その与信判断に耐えうる、事業計画やロジックの構築に加え、決裁者が全く知らない新規分野に対する素朴な疑問等にも全て答えられるようになる必要があります。一緒に悩み考えて、事業者の想いを数字に落とす。そして、その数字を検証しながら、あるいは表現の仕方を学びながら、第三者を納得させる資料を作っていくというプロセスを経験させられたことは、その行員の成長や自信、達成感に繋がったと思います。出張窓口の相談件数はこれから伸びていくと思いますが、人材育成という面から見ると、行員にとって悩ましいような相談「どうしよう」「ああしようこうしよう」というのが出てくることに、出張相談会をする意義があると思っています。
そのほかには、ビジネスマッチングを行ったことで、既存のお客さんの売上に繋がったというケースもあります。銀行はそれこそありとあらゆる業種と繋がっていて、それぞれの課題というものがあり、そこに嵌まるサービスや商品であればすぐに横展開が可能です。特に東部地区、郡内地区全体が一つの塊になっていて、そこでの情報伝達はとてもスムーズなので、うまく活用していただけたらと思います。銀行の業務というのは事業の主役ではなく、常にサポート役なので、お客さんに喜んでもらい、ありがとうといってもらえることを大切にしています。昔上司が「お金を貸すのはお客さんのため、お金を貸さないのもお客さんのため」と教えられました。もしも融資が承諾とならなかった場合でも、相談者は気を落とすだけではなくて、行員と一緒に相談しながら、客観的に見て安定したキャッシュフローが生み出せる、強いビジネスモデルへブラッシュアップする機会だと捉えてもらえたら建設的な関係が築いていけると思います。そのブラッシュアップの機会を、ドットワークPlusで月2回提供しているので、ぜひ気軽に相談してもらえたら嬉しいです。これからも多くの事業者さんと繋がり、一緒に地域を盛り上げていけたらと思います。